第12話

FBI行動分析課 「連れ去られた少女」

 少女誘拐事件。
 少女の父母は離婚して、別々に暮らしている。娘は母の家にいるが、精神的には父とつながっている。その父は二度目の再発の末期癌だ。
 母はサッカーチームのコーチをしている。娘は腕に怪我をしている。明日の試合に出たい出さないで喧嘩し、母は「頭を冷やしてこい」とランニングを命じた。
 木陰で父に電話する少女。しかし、携帯は留守電になっていた。その時である、いかにも犯人といった感じの男が顔見知りの少女に話しかけるのは。老いた犬が迷ってしまった。探すのを手伝ってくれ。視点は、女の子とそれを遠くから眺めているブランコの男の子のみ。
 BAUの行動が遅れたのは、娘は父のところに行ったと見なされたため。事件発生後、20時間をロスしている。攫われた子供たちは、24時間以内にほとんどが殺される。猶予はない。
 というふうに、大きなプレッシャーがギデオンのチームにかかる。その分、犯人像はシンプルだ。非常に政党的なロリコン。むしろ、犯罪的なのは近くに居住している主婦だ。この女、性犯罪者に異常なまでの悪意をもち、わざわざ末期癌の旦那にリストを届けて相手を殺させようとした。いるだろう。いるよなあ、こういう被害妄想的な偽善者。社会を窮屈にする監視者。
 ロリコン男のほうは、パソコンのなかに山のようなポルノ映像を溜め込んでいるタイプ。先日の列車ジャックの犯人もそうだったが、気の弱い犯罪者もバランスよく配置しているところが、気に入っている。
 目を見張るようなトリックや心の闇はなかったが、佳作。