第11話

越境捜査

 ビジネスでも勝負事でも自分の土俵に引き込まなきゃ負け、と言われる。システムを作ったもの勝ちともいう。
 そうはいわれてもなかなかねえ、とふだん私たちは思っている。
 だからこそ、ドキュメンタリーでもフィクションでも思いも付かなかった土俵に出会うと感動する。土俵の崩壊くらいカタルシスをもらすものもない。
 「越境捜査」は誘拐捜査がテーマだ。
 相手の土俵に乗らざるを得ないゲーム的犯罪。
 ふつうでもそうなのに、ここでは「相棒」にふさわしい見事な知能犯が登場。まさかの「犯罪現場」を構築する。
 技術的な意味でリアル、発想的な意味で幻想的な現場に紛れ込んだ、杉下右京の推理と演技に拍手を。
 そして、この大嘘を構築したハセベバクシンオーに栄光を。
 ひょっとしたら、第7シーズン最大の傑作ではないかと思う。

角田(山西惇)課長らの捜査に協力した右京(水谷豊)は、拳銃を持った容疑者を追い、神奈川県警とともに住宅街で一軒一軒しらみつぶしに捜索することに。そのころ同じ住宅街の一角にある藤堂(五代高之)宅では、娘が誘拐され、神奈川県警の早川刑事(益岡徹)らが犯人と極秘裏に電話による駆け引きを行っていた。右京は藤堂の自宅に異変を感じ、やがてこのもうひとつの事件に首を突っ込むことになり…。右京が焙り出した真実とは?

放送:2009年1月14日
ゲスト:益岡徹 五代高之
脚本:ハセベバクシンオー
監督:橋本一