第10話

ダーク・ヒーロー

 ひさしぶりにゾクゾクっと来た傑作。
 いつもとは作品の作りがまったく違う。たぶん実験作。
 冒頭のシーンは、モノクロ。血だけが赤。夜の獣に襲われる。ヒーローであるナイトがナイフで撃退する。
 実写なのに、二次元的。瀧のように降り注ぐ雨の中、血しぶきが飛ぶ。すごくクールな絵作り。
 なにか違うと思い続けていてわかった。最初から最後まで視点が、犯人視点なのだった。半年前、ギャングから暴行を受け、PTSDから精神疾患にかかった人気コミック作家の視点。
 正気でない視点から世界を覗くのはとても怖い。ふつうの光景が怖い。
 今回ばかりはプロファイリングもお手上げで、ただただ常軌を逸した世界を、その世界そのものになって楽しむストーリーになっていた。おそらくは、いままでで一番の異色作。これからもとんでもない犯罪者像は登場するだろうが、描き方のパターンはそれほどは多くはないはずなので。
 必見。

ロサンゼルスで2週間の間にストリートギャングばかり7人が殺されるという事件が起きた。凶器は全て鋭利な刃物。犯行は回を追うごとに残虐化していた。犯人が精神を病んだ人間であることを見抜いたBAUは、プロファイルを一般に公開し、犯人の身近な人間からの情報を募ることに。そして逮捕されたのは売れっ子コミック作家のジョニー。しかし彼には犯行の自覚が一切ない。彼の心の闇に、BAUが迫る…。