第19話

特命

 僻村での老女の死。すでに使われなくなった丸木小屋での不気味な惨劇。いや、惨劇のあとを伺わせるシーンから始まる。
 自閉症だが天才的な画才をもつ青年の描いた、おどろおどろしい絵が、特命係に送られてくる。
 聖書のセールスマンとして潜入捜査を敢行する杉下右京。その頃、特命係では着任した神戸尊が、杉下を捜してウロウロしていた――
 いい出だしである。
 横溝正史ばりの探偵ものとして始まった時代ががった物語に、息子の福助が入ってくることで拝金主義の「現代」が浸入し、事件がどんどん生臭くなってくる。福助自身はきわめて純粋な青年だけによけいたちが悪い……
 ここでは、事件を長引かせるために連続殺人に踊らされる探偵を描く定型は採用されず、天才が描いた惨劇図を読み取ることで、杉下は完璧な推理を描く。ここで終わっていたら傑作だった。


 最後の蛇足の意味がよくわからない。殺人はひとつ。そこに傑作の匂いを感じとっていたのに、最後の十五分はほんとに残念だった。傑作マイナス一というのが最終回の感想だ。


 それにしても、新パートナーの名前には驚いた。このラテンなキャラクターが筒井康隆の「富豪刑事」を意識していないはずはない。次期シーズンで神戸尊のいろいろな過去が明らかにされていくのだろう。シーズンとシーズンを結ぶブリッジとしてはきわめてよく出来た構成だったと思う。それだけに、いまでもキイチの死が残念でならない。

警察庁の神戸尊(及川光博)という男が警視庁特命係に左遷されてくる! 一体何をしでかして特命係に配属されることになったのか?一方、右京(水谷豊)は尊の配属初日、彼に会おうともせず、ある山奥の村で捜査をしていた。 出端をくじかれた尊は右京を追いかけるように村へ。右京によると、この村の女性から殺人事件を暗示するような絵が添えられた手紙が送られてきたという。 村長の源一(前田吟)、その弟の晋平(日野陽仁)、住職の法春(苅谷俊介)ら村の人間たちに煙たがられながらも捜査を進める右京と尊。描かれた絵の真相は? 単なる描き手の想像か、それとも…? 右京と尊の新コンビで初の事件に挑むに大苦戦!?