第8話

誤算の果て

 ふたつの話が描かれる。
 ひとつは、タイムズスクエアの看板の下で、マティーニの宣伝パーティーが開かれ、巨大なマティーニグラスにモデルが飛び込んで感電死するエピソード。ほんとは感電死ではなく、検死が進むに従い、事件の様相が二転三転する。
 もうひとつは、クラブで起きた強盗殺人事件。店員は死亡、女性客の一人は頭を打ち抜かれ瀕死の重体。重体の女性をめぐってのCSIと犯人側の攻防が面白い。
 ふたつの話は一瞬も交錯することなく終わったが、どちらも面白かったので○。標準作。

 タイムズスクエアの看板の下で、マティーニの宣伝パーティーが開かれる。パーティーのシンボルは、巨大なマティーニグラス。そこにモデルのジェナが飛び込んだ直後、大量のテニスボールがどこからともなく飛んできて電線がショート。感電したジェナは、全身にヤケドを負って死亡する。ステラ、リンジー、フラックは、早速捜査を開始。パーティーを主催した広告会社のバーンズとリアから事情を聞く。彼らは、タイムズスクエアに看板を出したがっている同業他社が妨害したのではないかと話す。
 リンジーは、看板に残されたテニスボールの衝突の跡を手がかりに、レーザー弾道ポインターでボールが飛んできた方向を特定。ステラとフラックが該当するビルに向かい、テニスボールマシンが置かれた「運動科学リサーチセンター」内で、泥酔状態の従業員ニックを捕らえる。取り調べに対してニックは、アルコール依存症を克服しようと努力していたが、毎週金曜日に行われる宣伝パーティーに禁酒の決意を惑わされて再びに酒に手を出すようになったと説明。何とかしてパーティーをやめさせようと考え、パーティー会場をテニスボールマシンで狙ったと自白する。
 ニックの逮捕により事件は解決したかに思われたが、シドが検視を行った結果、ジェナは感電する直前に肺水腫で死んでいたことが判明。その原因になったと思われる外傷も見つかる。しかし、肺水腫を起こしていたなら相当な痛みがあったはず。ジェナが、なぜ平然とパーティーに出られたのかは疑問だ。
 その後、ジェナのバッグの中から、キャンディー状のドラッグや札束、凸レンズの中に米粒が埋め込まれたユニークな指輪のパーツなどが見つかる。指輪にはジェナのものではない毛髪やDNAが付着。米粒には、ジュエリーショップの住所を表す「91X」という文字のほか、「魔法」という漢字が書かれていた。癌の痛み止めに使われるフェンタニルとヘロインで作られるドラッグの通称は「マジック」。恐らく「魔法」とは、この「マジック」のことを指しているのだろう。ジェナがモデル業のほかに麻薬の売人もしており、自ら「マジック」を摂取していたと考えれば、彼女が肺水腫の痛みを感じなかったことにも説明がつく。
 リンジーは指輪を販売するジュエリーショップに向かい、店主のパティから事情を聞く。初めはジェナとの関係を隠そうとしていたパティだったが、ひょんなことからマジック・キャンディーが見つかり、言い逃れができない状況に。彼女はマジック・キャンディーをめぐってジェナと争いになり、彼女を突き飛ばしたことだけは認めるが、殺意については否定する。
今度こそ犯人はパティで決まりかと思われたが、シドが新たな情報をもたらす。ジェナの肺水腫の原因は外傷ではなかったというのだ。さらにシドは、ジェナの胃の中に海水性のケイ藻が含まれていたことを指摘。これが大きな手がかりとなり、原因はイルカンジクラゲの猛毒と判明。パーティーで使われたビーチボールの中に、海水とともにイルカンジクラゲが入れられていた可能性が出てくる。ビーチボールの空気の入れ口には男女のDNAが。ステラとリンジーは、現場にもビーチボールにも近づくことができた広告会社のバーンズとリアに疑いの目を向ける。
 ステラとリンジーは広告会社に向かい、クラゲの件でバーンズとリアを追及。ビーチボールに男女一人ずつのDNAが付いていたと聞かされたバーンズは、リアからビーチボールを膨らますよう指示されたことを思い出す。実は、ビーチボールにクラゲ入りの海水を仕込んだのはリアで、彼女のターゲットはジェナではなくバーンズだったのだ。彼女は、マティーニの宣伝キャンペーンのアイデアを横取りしたバーンズへの恨みを晴らすため、彼の殺害を計画。途中までは順調に事が進んだが、ビーチボールの裂け目から外に出たクラゲがジェナを刺したのは想定外のことだった。リアは、ジェナ殺害の容疑で逮捕される。
 一方、マック、ダニー、ホークスは、クラブで起きた強盗殺人事件の現場へと向かう。被害者は2名。1人は客のテッドで、大腿部を撃たれて死亡。もう1人はバーテンダーのブランディで、後頭部を撃たれて重傷だった。ダニーは、ブランディと彼女の恋人ポールとともに救急車に乗り込んで病院へ。ブランディの回復を待って事情を聞くことにする。
現場検証を開始したマックは、犯人の血染めの足跡に着目。犯人は、テッドを殺した後でいったん店を出ていこうとしたが、戻ってブランディを撃ったのではないかと推測する。
 ホークスは、犯人が残していったマスクを調べ、鳥やげっ歯類のものと思われる小さな指を発見。また、マスクから採取したDNAがブランディの衣服に付いていた精液のDNAと一致することを突き止める。どうやら、犯人とブランディには面識があったらしい。
 その後、病院で待機を続けるダニーの元にマック、ジェシカが到着した矢先、意識不明だったブランディの容体が急変。担当のムーア医師は、なぜか一瞬除細動器の使用をためらう。それもそのはず、ムーア医師は兄のチャールズを強盗犯に誘拐され、ジェナを死なせるよう要求されていたのだ。結果的に、ムーア医師はブランディを治療して彼女の命を救うが、マックたちCSIには、チャールズの救出という新たな使命が課せられる。また、チャールズの誘拐がきっかけとなり、ポールはブランディの恋人ではなく強盗の一味だったことが判明。ダニーは、救急車の中でポールがブランディの手にキスをしていたのを思い出し、すぐに彼女の手からDNAのサンプルを採取する。
 ラボに戻ったマックたちは、事件が起きたクラブ前の監視カメラの映像を分析。電話で犯人からの指示を受けていると思われるポールの姿を確認する。映像を見た限りでは、殺しも誘拐も予定外だったよう。マックは、犯人は殺人のプロではなく、顔見知りのブランディに証言されるのを恐れ、口封じのために彼女を撃ったものとにらむ。
 やがて、犯人のマスクに付いていた指は、ある種のコウモリと判明。マックとホークスが標本専門店に出向いた結果、ポールはその店の従業員であり、店にあったコウモリの骨格標本の足がもげていたことが分かる。後の調べで、ポールが店で使っていた手袋に付いたDNAは、ブランディの手から採取したサンプルと一致することも明らかになる。
 そんな中、チャールズの携帯電話の電波がポールのアパートでキャッチされ、ダニー、ホークス、ジェシカが現場へ急行。部屋はすでにもぬけの殻だったが、ホークスが重大な手がかりを発見する。宅配便の空箱に付着した紙幣の切れ端だ。犯人たちは、盗んだ現金を宅配便でどこかへ送ろうとしたが、収まりきらずに途中で箱を変えたらしい。ダニーは、残された宅配便の箱をラボに持ち帰り、苦心の末に宛名の読み取りに成功。マックとともに潜伏先のモーテルに踏み込み、誘拐されたチャールズを無事救出する。そして、ポールとともに、強盗殺人の実行犯であるジェームズを逮捕するのだった…。

http://csi.dramanavi.net/blog/2009/02/228-8-2a1f.html#more