第8話

悪魔の囁き

 下半身と両手の指のない死体が発見される。
 下半身はワニに食われたのだが、指を切り落としたのは犯人だった。
 指がやがて死体の胃から発見される。ところが、よく調べると、十本とも異なる女性のものだった。
 恐るべき死のメッセージ。
 しかし、この身体欠損には、殺しだけではない、恐ろしいメッセージが込められていたのだ……

 シリアルキラーとしては、かなり最悪の部類に入る。ほんとに狂っていると、逮捕されることなど、なんともないのだ。これだけ割り切って悪魔の所行をやられると、ロッシーの言うとおり「われわれにできるのは、止めることだけ」ということになる。
 天才ドクターリードの名言。
 「一方を信じるためにはもう一方も信じないと」
 つまり、悪魔を信じている人間は神もまた信じているという皮肉。
 この犯人は神を嘲笑っているようにしか見えなかったが、笑うということは意識していることでもあって、と、キリスト教国の闇の深さを感じさせてくれるエピソードに仕上がっていた。
 日本のドラマもこれくらいやってくれると面白いのだが……。

■悪魔の刻印
フロリダ州ブリッジウォーターの通称「ワニ道路」のそばで、19歳の短大生アビー・ケルトンの死体が発見された。下半身をワニに食いちぎられた悲惨な死体だが、それだけではなかった。指を切り落とし、喉を裂き、胸には悪魔の象徴である逆向きのペンタグラムが刻まれていた。
しかし、悪魔教的な犯罪者にはふたつのタイプしかいない――とロッシは語る。一つは悪魔教を支えにする反抗期のティーンエイジャー。そしてもうひとつが、適応性悪魔崇拝者と呼ばれる者で、悪魔教の教義を自分の殺人衝動に当てはめるシリアルキラーだ。彼らは悪魔を信じているから殺すのではなく、殺したいから悪魔を信じるのだ。
■犯行はまだ始まったばかりだ
その後、アビーの胃の中から10本の指が発見された。しかも指はアビーのものではなく、10本とも全て別人、指紋の照合から、逮捕歴のある地元の娼婦のものであることがわかった。指はこれが初めての犯罪ではないという、犯人からのメッセージなのだ。10人の娼婦が最後に目撃された場所はぐるりとブリッジ・ウォーターをとり囲んでいた。犯人は通常、発覚を恐れて家の近くでは殺さないので、犯人はブリッジ・ウォーターの住人と考えられた。アビーはそのブリッジ・ウォーターで殺されているが、しかしそれは捕まえて欲しいというメッセージではなく、犯人が自分の犯行を知らしめるためにやったこと。やめたいのではなく、まだ始まったばかりなのだとロッシは断言する。
そして、その分析を裏付けるように、新たな行方不明者が発覚した。ハイキングに出たトレイシー・ランバートが行方不明になったのだ。誘拐現場である州立公園内のトイレを調べたところ、トイレの便器の上にトレイシーが持っていた本がきれいに並べられていた。混沌とした精神状態にある患者は、施設で秩序を保つために部屋を整理整頓するように命じられる。犯人は施設入った経験のある者に違いない。
カニバリスト
トレイシー・ランバートの捜索にブリッジウォーターの教会の信者たちが集められた。シリアルキラーは捜査に協力的なため、ボランティアの中に容疑者がいる可能性が高い。ところが、その捜索ボランティアの中から新たな行方不明者が出てしまった。夫と一緒に参加したシェリルが、一瞬の隙に連れ去れてしまったのだ。子供の頃に教会で祈っても救われなかったがために、すっかり教会嫌いになってしまったモーガンは、犯人は必ず教会の信者の中にいるはずだとマークス神父に迫った。後刻、非礼を謝罪するため教会に出向いた彼は、礼拝堂で脚のない女性の死体を発見する。死体はトレイシーでもシェリルでもなく、9ヶ月前に行方不明になった娼婦のものだった。犯人は死体を冷凍保存していたのだ。ホッチは、死体にレイプの痕跡がなく、脚が切断されているのは、人肉を食べているからではないかと疑う。アビーに指を食べさせていたのは、初めてではないことを伝えると同時に、カニバリズムの意味も含まれていたのだ。
■恐るべき真相
しかし、ガルシアの調査能力をもってしても、悪魔教でカニバリストの患者を発見することはできなかった。というのも、フロリダで最も重傷の患者が収容されるヘイゼルウッド病院が、火事によって1988年以前の患者の記録が失われていたからだ。しかしその火事で死亡した未成年担当医が遺したノートから、人食い悪魔に取り憑かれた患者、フロイド・フェイリン・フェレルの存在が浮上する。ブリッジ・ウォーターにはフロイド・フェイリンという名の住人が存在した。
フロイドの家に向かった捜査陣はフェイリンを逮捕。地下室に監禁されていたシェリルも無事救出した。しかしどの部屋にも、家の地下室で発見された大量の冷凍死体の中にも、トレイシーの姿はなかった。フェイリンがマークス神父との面会を要求したため、モーガンは神父を同席させて尋問をする。やがてフェイリンの口から恐るべき真相が語られた。なんとフェイリンはトレイシーをシチューにして、捜索ボランティアにふるまっていたのだ。悪魔のせいにするだけでは、カニバリズムの罪悪感から逃れることができず、彼は町の人々に同じ罪を背負わせたのだ。

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キャスト

デヴィッド・ロッシ ジョー・マンテーニャ BAU創設メンバー。ホッチの師
アーロン・ホッチナー トーマス・ギブソン BAUトップ。家庭は崩壊
エミリー・プレンティス パジェット・ブリュースター 途中から参加。語学の達人
デレク・モーガン シェマー・ムーア 正義感、タフガイ担当
ドクター・スペンサー・リード マシュー・グレイ・ギュブラー IQ187の天才。母親が統合失調症
ジェニファー・ジャロー エー・ジェイ・クック BAU広報担当
ペネロープ・ガルシア カーステン・ヴァングスネス 情報担当。本部から出ない