絲山秋子。第134回芥川賞受賞作。
本書には「勤労感謝の日」と「沖で待つ」が収録されている。薄い本である。
勤労感謝の日(「文學界」2004年5月号)
何が勤労感謝だ、無職者にとっては単なる名無しの一日だ。それともこの私に、世間様に感謝しろ、とでも言うのか。冗談じゃない、私だって長い間働いて、税金もがっぽりとられて来たのだ。失業保険はかつて働いた分に応じて貰えるのだが、キャッと叫びたくなる程短期で少額だ。もちろん一緒に住まわせて貰っている母親には感謝している。働いていた頃のように月に五万円ずつ――それだって一人暮らしの家賃や食費のことを考えれば安いが――家に入れることが出来ないのがもどかしい。失業保険はあと二ヶ月しか残っていない、その間に就職できる保証はどこにもない。
絲山節はこちらの作品のほうに濃いと思う。やはり失業者や社会から脱落した者が毒を吐かなければ。近所のおばさんに無理矢理見合いをセッティングされ、とんでもない「仕事大好き人間」に出会い、放り出してかつての同僚と会いに行く、まだ物足りなくて近所で飲む――というごく日常的な一日がどうしてこんなに面白いのか不思議だ。