第9話

あなたが二人いればいいのに

 TBS金曜10時。
 始まった当初、すごく盛り上がって、楽しみだ楽しみだと言っていた「歌姫」だが、終盤が近くなるにつれ、だんだん観るのがつらくなってきた。
 いまや、意地で観てる感じすらする。
 私は土佐とか海とか昭和とか映画館といった、舞台と時代に面白さを感じたのだが、どうも脚本は三角関係と記憶喪失に重点を置いているみたいだ。
 小池栄子、好演しているのに、観ているのがつらい。
 ここで描かれている記憶喪失は、言い換えると、時差が生む二重人格である。過去と現在が混じるのか、過去が現在を浸食してくるのか。それ自体はわりあい面白いテーマだと思うのだが、それを象徴する事象が恋愛であることに私は引く。けっこう、どん引きである。
 どうも全体がぎくしゃくしているが、その中にあって、長瀬智也だけはいつも魅力的だ。これが最後の救いかな。