大奥スペシャル

 公開中の映画「大奥」と連動するテレビ版。尾崎将也脚本、葉山浩樹演出。
 時代的には映画の数年前の話で、つながるようにできている。じつは大奥ものを観るのははじめてである。ドロドロしていそうで敬遠していたが、実際に見てみると、そうでもない。
フカキョンはいつ帯をとかれてくるくるーっつうのをやるの」
 と聞いて、妻に怒られる。大奥ものはそういうの、やらないらしい。なーんだ。
 お目見え以下の奉公人の視点から語る。それって「お手伝いさんは見ていた」じゃないか。あれの江戸版か。
 将軍は記号として扱われ、顔出しNGというのもお決まりなのね。ちょっとは出てましたが。
 で、話自体は、ありえん。将軍暗殺計画が発覚し、燃えかけた血判状から犯人グループが判明して、八人中七人までは切腹して果てる。しかし、一人だけは文字が読み取れず、生き残る。
 おかしくないですか?
 踏み込まれて戦って果てるなら筋は通るが、みんな、踏み込まれる前に切腹して果てているのである。血判状からバレることを予想してのことだ。なら、最後のひとりも果てているべき。名前の部分が焼けたのは偶然に過ぎないのだから、知ることはできなかったはずだ。
 この男、伸吉は、大奥の女性たちに買い物を頼まれる下働きをしながら様子を伺っているが、やがておしの(貫地谷しほり)と恋仲になり、その仲をおまん(フカキョン)が取り持つ。女は男に惚れているが、男は女を利用して将軍暗殺を狙うという展開。それはいいのだが、おしのは別に側室というわけでもなく、偶然将軍にぶつかって、閨を申し付けられるという展開。またここでも偶然が顔を出す。ミステリーとしてはここで破綻。二回も偶然をやっちゃもうダメでしょう。では、ミステリーではないとすれば、いったいこのドラマはどこを見所にすればいいのか。どういう事情があるのか知らないが、脚本はもうすこし整合性をもたせてほしい。