小松左京さん、ご逝去

 SF御三家の重鎮、小松左京さんが亡くなった。
 茫然としてしまって、悲しいとか残念といった気持ちはわいてこない。
 中学、高校と、SF御三家が精神的支柱だった。
 もし小松左京が存在しなかったら、私は本の世界に入り込まず、そのまま死んでいたかもしれない。どう考えても、本以外に私の生きる道はなかったのだから。
 いま、著作リストを眺めていて、「明日泥俸」なんて書名を見ると、胸が痛む。読んでいた時の状況や気持ちまで蘇ってくるのだ。角川文庫をめくる手触り……
 特別な時期に読んだ、特別な本だ。
 長編はすごかった。わからなくても、すごかった。
 短編も印象に残るものが多かった。
 活動は多彩だった。とくに後期はイベントと映画に力を注ぎすぎた。本来のテーマである「実存」とか「イタリア文学」に半分でもいいから時間を割いていたら、と悔やまれてならない。

 極私的小松左京ベスト3。
「日本アパッチ族」(長編)
「せまりくる足音」(短編)
「コップ一杯の戦争」(ショートショート