ぼうふら漂遊記

 長い長い「後巷説百物語」を読み終わりすこし放心した。
 次、なにを読んでいいか分からないというときに私が手に取るのはかならず色川武大全集で、今日は16巻を読んだ。
 メインはミセス・アンとともに世界を漂泊する「ぼうふら漂遊記」。何度読み返しても秘書役のミセス・アンが魅力的だ。人妻を伴ってのギャンブル旅行という体裁だが、文章の隅々から大きな屈託が伝わってきて、そこが読みどころ。ロンドンでアンの養父母を訪ねる件がとくに面白い。