ジェネラル・ルージュの凱旋

 海堂尊、宝島社。
 「チーム・バチスタの栄光」、「ナイチンゲールの沈黙」に続く、田口&白鳥シリーズ第三弾。いまならまさに「読んでから観るか、観てから読むか」というところだが、私は「読んでから観る」を選んだ。
 ついでに文庫ではなく、ハードカバーを選んだ。文庫とハードカバーではずいぶん値段が違いそうだが、文庫は上下巻なので、実際には680円しか変わらない。この重厚な物語にはハードカバーが似合う気がする。

 物語を堪能しちゃったので、じつはあまり書くことがない。
 話は文句なしに面白いし、医療現場、とくに緊急外来と産婦人科のヤバさもひしひしと伝わってくるし、なんといっても、主人公のジェネラル・ルージュこと、速水晃一のキャラクターが最高だし。
 なぜ、速水晃一がジェネラル・ルージュと呼ばれるようになったか。このエピソードには寒気がした。この部分、映画ではちゃんと映像化できているのかなあ。なんせ人が神になる瞬間だからなあ。
 あとは、猫田師長のキャラクターがどんどん前面に出てきたことが特筆すべき特色だと思った。この人はまだまだ育つ。
 重要なのは狂言回しの田口先生だ。決して単独では有能そうに見えないし(でも有能なんだけど)、不機嫌であまり動かない。そういえば、と京極堂シリーズを思い出した。関口巽にいたってはうつだったり、錯乱していたりで、ほとんど正気を逸しつつ、物語を前に運んでいく。狂言回しが脳天気じゃない、というのは面白い物語のひとつの特徴なのではないだろうか。


 桜宮市にある東城大学医学部付属病院に、伝説の歌姫が大量吐血で緊急入院した頃、不定愁訴外来の万年講師・田口公平の元には、一枚の怪文書が届いていた。それは救命救急センター部長の速水晃一が特定業者と癒着しているという、匿名の内部告発文書だった。病院長・高階から依頼を受けた田口は事実の調査に乗り出すが、倫理問題審査会(エシックス・コミティ)委員長・沼田による嫌味な介入や、ドジな新人看護師・姫宮と厚生労働省の“火喰い鳥”白鳥の登場で、さらに複雑な事態に突入していく。
 将軍(ジェネラル・ルージュ)の異名をとる速水の悲願、桜宮市へのドクター・ヘリ導入を目前にして速水は病院を追われてしまうのか……。そして、さらなる大惨事が桜宮市と病院を直撃する。