第2話

スティーヴン・キング 8つの悪夢 「クラウチ・エンド」

 「踵のかすれた土地」
 とタクシーの運転手は言った。
 新婚旅行中のカップルが、夫の仕事上の知人から夕食の誘いを受ける。夫は若い弁護士で、野心家。もちろん、そんな誘いを断るわけはない。それを知っている妻はぎりぎりまで隠していた。妻の反対を押し切り、友人宅へ向けて出発する夫。
 最初につかまえたタクシーは「クラウチ・エンド? 外国人の行く土地じゃない」と言って断る。
 二代目のタクシーの運転手はまるで幻のようだ。よく喋り、ふたりをクラウチ・エンドまで運び、消え失せる。
 クラウチ・エンド。異次元との接続地。
 時計台が見えるから、ロンドンの一部ではあるのだろう。
 妻は怪異が見える人らしい。夫は見えない。そんな夫でも、「穴」の中には強烈なイメージを見た。
 異次元のアイコンは不気味な子供たちと片目の周りの筋肉が露出した猫。
 逃げるふたりの物語はまた、迷ったふたりの物語でもある。
 強烈な方向音痴の私には「出られない」「到着しない」というイメージが怖かった。
 単純にいえば、呪われた土地の物語ということになるだろう。
 クラウチ・エンドは実在の地名で、実際はこんな感じらしい。

ロンドン北部にクラウチエンドという、
ロンドナーの憧れ的存在であるちいさな街があります。
最寄の地下鉄駅がなく、交通が不便にも関わらず、人気がある理由は、
緑の多く都心にいながらも、かわいい田舎町に住んでいるような
気分が味わえる雰囲気にあるのようです。

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