イヴの贈り物

 wowowのWドラマ、再放送。
 上のリンク(公式ページ)にこういうコピーが書いてあります。
 「全てを失った男の哀切が胸に迫るピュアなラブストーリー」
 ダメだろ、そのコピーは。
 意地でもラブストーリーにしないところに、このドラマのほとんど唯一の存在価値があるのに。
 館ひろし主演。
 私、石原軍団関係は嫌いです。でも、喰わず嫌いはいかんなと思って、とりあえず観てみて、やっぱりダメだと思った。軍団方面、鬼門かも。
 何ヶ月か前ですけど、村上春樹の新訳で「ロング・グッドバイ」を読んだわけです。ハードボイルドの巨匠チャンドラーの代表作で、私立探偵フィリップ・マーローの物語。あまりにも素晴らしくて感動しちゃったわけですが、感動したものってなかなか感想が書けない。感情が単純じゃないですから。
 それでも、一点だけ挙げるとすれば、マーローのセリフ回し。洒落ていて、タフで、なんて頭がいいんだろうと思わせる。感情も繊細だし。
 「イヴの贈り物」もいちおうハードボイルドの範疇に入る作品のはずなんだけど、頭が悪い。頭の悪いハードボイルドほど空しいものはない。
 あと、ドラマの作り手が逃げすぎ。ステルス性胃ガンが見つかり、余命幾ばくもないと分かったから、復讐を誓う。じゃあ、病気になってなかったら、時間をかけて記憶を風化させた? そんないい加減な動機は認められない。
 途中で、館ひろしの復讐心をかき立てるためだけに、貫地谷しほりを自殺させてしまうのは大失敗。
 反対でしょう。やさしいおじさんを演じる館ひろしを被害者にして、貫地谷しほり自身が復讐しなきゃ。せっかく貫地谷しほりをいい女、強い女に描いたらのに、これじゃあまりにも女を馬鹿にしすぎ。
 役者寸評。

館ひろし 黙ってりゃいいってもんじゃない
貫地谷しほり 極貧故の歪みと優しさを繊細に表現
手塚理美 無難
石倉三郎 いい役。ちょっと前に出すぎかも
宇崎竜童 この作品中唯一ハードボイルドを表現
大沢樹生 ギラギラした存在感が印象的

 ということで、マイベストアクターは宇崎竜堂です。この作品に関しては。
 スタッフ。

監督 佐藤純彌
原作 白川道

 キャスト。

戸辺和人 館ひろし 「五井商事」鉄鋼部・部長
中沢恵子 貫地谷しほり 服飾専門学校生。
父の残した借金を抱える
戸辺慈美 手塚理美 和人の妻。12歳の娘を死なせアル中に
河津 石倉三郎 戸辺が行きつけのバー、「河津」のオーナー
吉岡 宇崎竜童 「珈琲銀杏」のマスター
望月祐介 村井国夫 望月法律事務所・所長
時田肇 大沢樹生 暴力団「京友会」の構成員。街金の取り立て