バルトの楽園

 wowowで「バルトの楽園」を観る。
 捕虜収容所もの。
 捕虜になるのは、第一次世界大戦、青島島で投降した4700人のドイツ兵。
 徳島俘虜収容所所長、のちの板東俘虜収容所所長を務めた松江豊寿(まつえ・とよひさ)の物語である。松江はドイツ人捕虜に対して人道的対応をしたことで有名。物語のクライマックスは、終戦後、松江の扱いに感謝したドイツ兵たちがオーケストラを結成して「第九」を演奏するところだ。だから、「楽園」は「がくえん」と読む。
 ストーリーは松江の人道的な態度がどこから生まれたのかを追っていくが、推測の域を出ていないような気がした。実話に基づくせいか、対立もなく、展開もない。ただただ、理想的な収容所運営が描かれる。
 同じ収容所ものでも、「戦場にかける橋」は対立と和解、構築と破壊など、対立する概念を含んで激しく展開する。単純にして複雑。複雑にして単純。だからこそ名作なのだろうけど、こういう作品を観てしまうと、「バルトの楽園」の単調さはちょっとキツい。
 役者としては、所長(松平健)を支える副所長(國村隼)がとてもよかった。國村隼は「震度ゼロ」の刑事部長役などいい演技が多いなあと思う。
 スタッフ。

監督 出目昌伸
脚本 古田求
音楽 池辺晋一郎

 キャスト。

松江豊寿 松平健 坂東俘虜収容所長
高木繁 國村隼 収容所副官。ドイツ語が堪能
伊藤光 阿部寛 収容所職員
クルト・ハインリッヒ ブルーノ・ガンツ ドイツ軍青島総督(少将)
カルル・バウム オリバー・ブーツ 脱走癖のある問題児
ヘルマン・ラーケ コスティア・ウルマン 兵士。この映画の語り手
松江歌子 高島礼子 豊寿の妻
馬丁宇松 平田満 豊寿の家の馬子
すゑ 市原悦子 脱走兵を助けた村の女
たみ 中島ひろ子 すゑの娘
黒田 大杉漣 坂東小学校校長
志を 大後寿々花 オスカー・フランツの娘
マツ 中山忍 ヘルマンに恋心を抱く村娘
広瀬 徳井優 坂東町長
林豊 タモト清嵐 郵便配達の少年
松江の父 三船史郎 会津藩
多田少将 泉谷しげる 松江と対立
島田中佐 勝野洋 俘虜情報局局員
南郷巌 板東英二 久留米俘虜収容所所長